3本スケールの征服


理想を言えば当然,各調のスケールをマスターするに越したことはないでしょう。
しかし、各調のスケールをマスターしなくても、3本スケールをマスターされれば
速弾きが楽しくなります。
この奏法は反復と共に更に向上するものです。私の実例をお聞きください。
実例を聞く2000中峰秀雄カザルスホールライブより、



ここでは実戦的な3本スケール攻略法を伝授いたします。

過去、私が師事した巨匠の中にも3本スケール肯定派と
否定派が見事に分かれていました。
否定派は必ず音の粒がそろわない、バランスが統制出来ないと言います。

否定派の巨匠はなるほど二本奏法で立派な演奏をしていました。

しかし、然らばトレモロは何故二本奏法で行わないのか?

統計的に言うなら二本奏法の名手は往々にしてトレモロが
苦手に感じられます。
否定派は3本粒がそろわないと自ら認識しているとおり、シビアに聞くとトレモロの
p.a.m.iの4つの音の間隔が微妙に不ぞろいなのです。


立て板に水のような巨匠イエペスの奏でるスケール、
トレモロを応用したプジョールの「くまんばち」を聞かれれば
3本スケールの完成形は完璧です。
3本スケールの粒がそろわない状態は,3本スケールが駄目なのではなく、
技術が未完の状態である事を再認識してください。

この訓練はカルカッシの25エチュード作品60-7番を学習中あるいは、
終了したレベルから始めるのが理想です。m,iが未発達の状態で始めると混乱を生じます。

あしたのためにa,m,i3本の循環を体に叩き込む。
但しその約束として、各lesson は完全にマスターし終わるまで先に進まない事!!

lesson 1
  トレモロを応用した各開放弦3つ打ちのa,m,iで@からEまでを往復します。
  まずはアポヤンドで!慣れたらアルアイレも訓練します。
  その時第二関節にほど良いカーブ(握る形)を維持する。
   右手はバタつかず、弦のチェンジ時に(弦に垂平方向の座標は固定)
   弦に垂直方向に平行移動していく。
   弦のチェンジは必ずaで有る事を認識してください。

  始めはゆっくりと毎日3分も連続すれば十分。ただし毎日。力まず必要最小限の力で。
   条件反射のように、無意識にa,m,iで@からEまで開放弦を往復出来るまで頑張ってください。
     私の生徒は平均6ヶ月でマスターしています。


lesson 2 

次にlesson 1のパターンを各人の指癖で解析しましょう。
どうしても弦のチェンジは必ずaと言う必要はありません。
iあるいはmの方が楽な方はその連続性に統一する。
但し初めからiの方が順指で楽だと決めつけてはいけません。
上昇スケールのEから@が今度は逆指になってしまうのです。
ですから鍛える意味でも始めの2ヶ月は体験的にトレモロを応用した
a,m,iの順序でまず鍛えてください。

lesson 3 今度はa,m,iの順序(各自に得意の)循環系で(a,m,i,aでa,m,i,mとなってはいけません)
       4つ打ちで@からEまで開放弦を往復します。アポヤンドで!
        この場合弦のチェンジが各弦毎にずれて行き難しくなります。
        忍耐強く毎日3分、6ヶ月続けましょう。
         たかが3分です、試して損はないはずです。
以上までの段階でアポヤンドは必要ない!という今流行の考えも聞こえて来ます。
バッハ等、音の均一化の為、総てアルアイレ統一という、考えの引用でしょう。ここで大事なのは均一の為に
アルアイレ統一は結構ですが、その必要十分条件として確実な芯の太くて透るアポヤンドもマスターしている事を忘れないでください!

アポヤンドがこもると考える方は、正しくアポヤンドをマスターしていないのです。ハープの太い音を思い出してください。
アポヤンドがこもる音を出しやすいのは事実です。
また逆にアルアイレでも甘い太い音が出せなければ真のアルアイレ奏法を習得した事にはなりません。
アルアイレはメタリックな音が出しやしやすい、またアポヤンドはしっとりした音が出しやすいという、
初歩段階のレベルで技術習得と誤解しているケースに気をつけましょう。

結論はアポヤンド、アルアイどちらも思うイメージの音が出せる段階が技術完成なのです。
どちらも同じ次元の音が出せればミックスしても一向に差し支えないわけです。
音の均一化の為、総てアルアイレ統一という、考えはアポヤンド、アルアイでどちらも同じ音が出せない(異質な音しか出せない)と、
自らタッチの未完成を公言している様なものではないでしょうか?
料理と同様、好き嫌いは解釈の自由ですが、両方、マスターしておいて悪いはずは無いのです!


lesson 4 さてイヨイヨ実戦です。
まず最も解りやすい例でソルの魔笛の主題と変奏からコーダの上昇スケールです・












EからBにかけて3つずつのスケールです。はじめは開放弦で右手のみEamiDamiCamiBamiと練習します。
常に弦のチェンジはa指である事を意識して。最終的には明確な音階を鳴らすにはアポヤンドです。アルアイレでも同次元の音量を出せるのが理想です。まずトレモロの感覚でアルアイレで滑らかにEからBまで弾けるように訓練します。
運指は上記の楽譜どおり。次に左手のみでEからBまでの運指を訓練します。譜例、第三小節はじめ和音@Aミとシをa,mで弾いてEにすぐaが行きにくい方はpで始めだけ代用してEpmi 以降amiも可です。
最後に左右シンクロさせて完成。ゆっくり始めて、すこしずつスピードアップです。
次回は下降スケールの予定です。それまでじっくり練習なさってください。